Toys To Artインタビュー09 : 1000tentacles

今回紹介するのは近年独自のスタイルのレジンフィギュアやバイナルを発表し注目を集めている、マレーシアに本拠を置くデザインスタジオの1000tentaclesです。創設者のLeong WanとKok pH Khorはかれこれ20年以上もこの業界で活躍している有名アーティストで彼らの作品は広告用のアート等で使われています。またそれ以外でもコミックス、キャラクターデザイン等2D/3D問わず多種多彩にわたり活躍しています。

そんな彼らの作品は多くの国際的なアートショーでも展示され、各国で紹介されるなど評判となっています。グラフィックソフトウエアの第一人者としても知られ、多くの国際的なアート雑誌で取り上げられ、多くのアーティストに影響を与えています。

近年では斬新なレジンのフィギュアを発表して世間を驚かせた後に、満を持してバイナルトイの世界に進出しました。2018年にはデビュー作であるKid and Monsterシリーズの「Screaming Monster」を皮切りに2019年には第二弾の「Monster Tree Trunk」も発表しています。

Toys To Artでは今回1000tentaclesのLeong WanKokをインタビューし、彼らがこれまで歩んできた道とその作品に対する理念を聞いてみました。


Toy To Art(以下TTAと略): ご存知ではない方の為に1000tentaclesやあなたについて自己紹介をお願いします。

Leong WanKok(以下LWと略): 1000tentaclesとはマレーシアの首都クアラルンプールを本拠に活動しているアートスタジオです。普段は国内外の多くの企業と広告やキャラクターのデザインを手掛けています。

私個人としてはパハン州のSungai Luiという町の出身で、アーティストの仕事を求めてクアラルンプールに出てきました。

経歴ですがもう20年前にもなりますが、この業界に入りたての頃はコミックスのアーティストやイラストレーターの仕事を主にやっていました。自分のコミックはもとよりゲームやアニメの作品に関するイラストやコンセプトアートをこの頃たくさん描いた記憶があります。

そして実はこの頃からおもちゃが好きで、仕事の合間に趣味でおもちゃの造形をしていましたがまさか今になってこの経験が役に立つとは思いませんでした。

TTA:これまで影響受けたものはありますか?

LW:私の作品には必ず「現実に即してない、非現実的でファンタジ―が感じられる」という同じテーマを持たせています。

我々はこの世界に住み、良くも悪くも毎日現実に直面しています。ある時毎日の出来事や周囲のモノをよく観察するとルーティンのようにほぼ毎回同じことを繰り返していることに気が付きました。その瞬間これまで守っていた世界のルール、社会常識、超えて引けない一線などが私にはものすごくつまらないものに映りました。

そんな私が現実に縛られている作品を作ると思いますか?そういうしがらみから解放されたものにこそ、私は興味があります。なので質問に戻りますが、私が影響受けた作品はこの組み上がった社会に対して反逆精神を持った作品が大半になります。

TTA:何時頃からおもちゃを作り始めましたか?またデビューの作品はどれになりますか?

LW: 玩具の造形自体は、先ほどお話したようにコミックスを書く合間に趣味でやっていました。粘土をこねるのが好きで自分のキャラクター作って楽しんでいました。

デビュー作は「Octopus King」となりますが、正直もう古すぎていつの作品か全く覚えてないです(笑)。当時のことで凄く覚えているのが、おもちゃの作り方を一度勉強したくてレジンフィギュアを作ることにしたことです。あの時の経験を通して型の作り方やレジンキャストの扱い方を覚えました。今でこそ笑い話ですが、この頃はそもそもレジンという材料がクアラルンプールで一般的ではなく、画材関係のお店を探し回ってやっと見つけた記憶があります。考えてみると当時はおもちゃとはお店で購入するもので、自分で作るものではなかったので相談すると店員に変な目で見られていた気がします。

その後幸運だったのが、近所に住む造形家と何人と繋がりを持てたことです。彼らの協力のおかげで今につながる自分のレジントイを次々と販売できるようになりました。

TTA:最近の作品を解説していただいていいですか?

LW:最新作の「Monster Tree Trunk」は「Kid & Monster(子供とモンスター)」バイナルシリーズの第二弾になります。今回心掛けたのはデビュー作の「Screaming Monster」と対比になるように今回のモンスターを描くことでした。今回の「Tree Trunk」は一見シャイでおとなしいモンスターに見えますが、実は体内にパラサイト型のミミズを住まわせていて結構凶暴な設定にしています(笑)。でもこのミミズにも本体と子供を外敵から守るという役割があるので必要悪という感じもします。こんな感じに普通なキャラに満足せず、必ずひねりを入れたいと常々思っています。

TTA:ご自身のおもちゃを作る際のデザインから製造までの流れを少し解説していただいていいですか?

LW:最新作の 「Monster Tree Trunk」を例にしましょう。まず最初に意外と気にするのがサイズで、これまでの作品を机に並べて大きさを比較してから必ず進行します。このサイズが過去の作品と釣り合うという部分意外で過去の作品に似たデザインにならないように心掛けています。作品を作るにあたり、常に自分にとって楽しく新しい物を作り続けたいという志を持っているからです。

その後頭の中のイメージを紙に描き起こしますが、ここで数回ブラッシュアップして自分が納得するまでひたすら手を入れていきます。個人的にはここはウォームアップに似た感覚が有って、何回か描いていくとエンジンがかかり一気に集中出来るようになります。このゾーンみたいな状態に入るとアイデアがあふれてきて、ボンヤリですがモンスターの全体の形が頭に浮かかんできます。

今回の場合だと、「Tree Trunk」のデザインが確定した時点で何か足りないように感じていました。しばらく考えたのち、モンスターが無邪気過ぎるということに気が付き、こんな無邪気なモンスターにはボディガードが絶対必要だ!ってなりました。またボディガードがいた方が絶対キャラクターとして楽しいと思ったのが決定打となり、先ほどのパラサイト型のミミズが誕生しました。

デザインが決まると、その先の原型の製作やディテール入れ等は順調に進むことが多いです。彩色サンプルに関してはアクリル塗料で自分で何パターンを塗り工場に確認してもらいます。製造中は量産品の品質管理が中心になります。もちろん大変ですが、よりよい商品を皆さんに届けるには絶対に手を抜けない作業だと感じています。もちろん完璧は難しいいですが、商品が可能な限りサンプルに近い品質で皆さんの手元に届くのを理想としています。

TTA:自身としては作品をおもちゃあるいはアートとしてとらえていますか?

LW:元来のおもちゃ好きとして、自分でデザインしたおもちゃを作るのが夢でした。またデザインの仕事の時もそうですが、必ず自分の独特のタッチが作品に入れるようにしています。はじめて手に取った時に笑顔でおや?とかあれ?みたいな感情をユーザーに持ってもらえるような作品を作りたいと考えています。私の作品で忙しい皆さんの日常に一瞬でも楽しい時間が生まれることを望んでいます。そういう役割を果たす作品という意味では自分の作品はおもちゃだと感じています。

TTA:現在の急成長しているデザイナートイ業界の現状についてどう感じていますか?

LW:今の市場は多くの独創的なアイデアや発想の商品を受け入れられるような成熟を見せており、その中で活動出来ることが非常に楽しいです。

多くのデザイナーからこれまで見られなかった独創的なアイデアが登場して、素晴らしいことにそれらはコレクターが支持してくれています。やはりどんな独創的なアイデアや商品でも受け入れられ支持してくれる土壌がないとその後の発展が望めませんので今の状況は私達のようなデザイナーにとって最高です。

私にも独特のスタイルがあり、日々ユーザーの皆さんが喜ぶ作品を作れるように努力をしていきますので今後も期待してください!

TTA:普段参加するイベントなどありますか?

LW:普段は上海トイフェスティバル、台北トイフェスティバルとモスクワのBJDフェスティバルに参加しています。

また今年の年末にタイのバンコクで個展を予定していますので、そちらもお楽しみにしてください。スタートは12月22日からで期間は1ヶ月の予定です。

TTA:今集めているものは有りますか?

LW:よく買うのがロボットやモンスター系のモノですかね。ロボット系ではマトリックスに登場したパワードスーツみたいなAPUという乗り物が一番のお気に入りです。モンスターではやっぱり初代のエイリアンがどうしても外せません。

TTA:今進行しているプロジェクトで皆さんにお話ししたいものはありますか?

LW:1000toysと共同で進めているオリジナルのプロジェクトがありますが、こちらは期待してください。今話せるのがサイズが6インチで差し替え可能なパーツがたくさん付いていることだけですが、きっと凄い遊びやすく楽しいものになると感じています。私は元のデザイン画を設定して、そこから1000toysが立体化するといった感じで分業して進めています。2018年のD-Conでデザイン画を公開したところ、皆さんから好意的な反応をいただけたので商品化が待ちきれません!早く販売されることにみんなで願いましょう。

TTA:日本のファンの方々に一言ありますか?

LW:昔から怪獣に興味があった私が描くモンスターや怪獣はいかがでしょう?怪獣の生まれの国である日本の皆さんには私の怪獣やモンスターの作品を通して独特なタッチなどを知ってもらえたら嬉しいです。もし今後同じタッチを見た時にマレーシアのデザインスタジオの1000tentaclesが頭を少しでも過ることがあれば大変光栄です。今後とも皆さんに喜んでもらえる作品を展開していく予定なので、日本の皆さん今後ともよろしくお願いします。

1000Tentacles Studioの最新情報は以下のSNSアカウントからご覧ください
Facebook: https://www.facebook.com/1000TentaclesStudio/
Instagram: https://www.instagram.com/1000tentacles/
Twitter: https://twitter.com/1000Tentacles